2026年度2号「地域からはじまる三鷹のまちづくり」インタビュー

公開日 2026年09月01日

三鷹まちづくり通信2026年度2号(2026年9月1日発行)

新川宿まちづくり協議会~通りから生まれる地域のつながりとにぎわい~

 三鷹市の新川宿エリアは、市の中央東側に位置し、住宅地と商店街、農地が共存する地域です。安全で安心な環境づくりと地域の活性化を目的に活動する「新川宿まちづくり協議会」は、住民を中心に、町会や商店会、学校関係者など多様な団体で構成されています。

 これまでの活動を通じてまちにどのような変化が生まれたのか、そして今後どのような取り組みを進めていくのかについて、地域で農業を営んでいる委員長の根岸稔さんにお話を伺いました。

安全安心なみちづくり

 新川宿まちづくり協議会は、よりよい新川宿地域のまちづくりを検討していくという趣旨で2007年に設立されました。発足した当初、地域のまちづくりという大きなテーマを前にして、何をすればよいのか、誰に参加を呼びかければよいのかさえわからなかったと、根岸さんは振り返ります。考えを巡らせる中で、まちづくりには地域に関わるさまざまな立場の人の協力が欠かせないと気付きました。そこで、町会や商店会、学校関係者、農事組合などに幅広く参加を呼びかけ、活動をスタートさせました。

 そしてまず始めたのが、地域に危険な場所がないかを調べるタウンウォッチングです。実際に歩いてみると、旧吉祥寺通り(市道第840号線)の約190mは東三鷹学園三鷹市立第一小学校の児童の通学路にもかかわらず、交通量が多くバスが通行し、歩道は狭くデコボコしていて、ベビーカーも通れないような危険な状態であることがわかりました。

 そこで、道路の改善・検討を始めることとし、「地域でつくる、人と地球にやさしい『ゆとり』と『くつろぎ』のある道」「子どもからお年寄りまで、みんながふれあう新川宿の道」というコンセプトを定義しました。

 人々が安心して歩ける、ゆとりとふれあいのある道を実現するには、一方通行化によって道路交通量を抑えることが不可欠であるとして、協議会は考えをまとめました。しかし、東八道路につながる通行量の多い道を一方通行化するのは容易ではありません。最初は反対の声もあり、諦めそうになったこともありました。それでも協議会のメンバーは、地域の合意形成に向け、不安を感じている人を個別に訪問し、趣旨や目的を丁寧に説明しながら、粘り強い活動を続けました。そして、三鷹市やまちづくり三鷹とともに検討を重ね、会の発足から4年半後の2012年3月、一方通行化によって交通量が抑えられ、段差の少ない両側2mの歩道が整備された、車いすやベビーカーでも通りやすい道「新川宿ふれあい通り」が完成しました。


新川宿ふれあい通り

通りから広がるまちのにぎわい

 現在、協議会の活動の中心となっているのが、新川宿ふれあい通りで年2回(5月と11月)開催される「新川宿ふれあい通り朝市」です。

 新川宿ふれあい通りを通行止めにした会場には、地域の商店会の新川商工栄会による模擬店のテントが軒を連ね、朝から焼き鳥や焼きそばのいい匂いに誘われた人たちが列を作ります。農地が多いエリアならではの三鷹産新鮮野菜や花鉢の販売も人気です。協議会メンバーによる射的や第一小学校のおやじの会の型抜き、昔懐かしいバナナのたたき売りの威勢のよい声も響き、子どもの笑顔がはじけます。第六中学校の生徒たちも参加しており、未就学児への読み聞かせや、吹奏楽部による演奏など、地域への発表の場でもあります。今年5月に第22回を迎えた朝市は、3時間の催しにもかかわらず、毎回約500名もの来場者でにぎわいます。

 朝市を始めてから個人商店が元気になったと、根岸さんはまちの変化を感じています。朝市をきっかけに地域の店を知った人が普段の買い物でも利用するようになったり、「コロッケがおいしい」「団子がおすすめ」といった口コミを聞いて来店したりする姿が見られるようになりました。朝市は、地域の店と人をつなぐきっかけにもなっています。

 協議会では、新川宿ふれあい通りが完成する前から、そこでイベントを行うアイデアが話し合われていました。目指していたのは、通りを完成させることだけではなく、地域の活性化につながる場所をつくることでした。近くで新しい店舗がオープンすると、朝市への出店を声がけし、新規出店者の応援も行っています。日頃から地域の情報を集め、さまざまな人に朝市へ関わってもらうことで、地域の交流が生まれるよう努めています。

 
大勢の人でにぎわう「新川宿ふれあい通り朝市」

子どもたちを地域で見守る

 新川宿ふれあい通りの東側にある第一小学校裏の花壇(ポケットパーク)の管理も、協議会の活動の一つです。花と緑のまち三鷹創造協会の花壇ボランティアや、第一小学校の栽培委員会委員の児童と一緒に、定期的に花の手入れをしています。

 子どもたちを地域ぐるみで育てようという思いから、学校に関わる活動にも力を入れています。第一小学校と第六中学校で行われる「あいさつ運動」への参加も、子どもたちと交流を深める大切な機会です。また、第一小学校北側の人見街道沿いでは、登校時の子どもたちの見守りも行っています。大きなマンションができ、遠くから第一小学校に通う児童の安全を見守るために、地域のシニアクラブの協力を得て発足した「一小セーフティサポーターズ」が活躍しています。これまで、約10名のメンバーが長年にわたり活動を続けてきましたが、高齢化により次の担い手が見つからないことが課題となっています。現在はメンバー募集のチラシを学校や地域のイベントで配布し、活動への協力を呼びかけています。

ポケットパークの手入れ
一小セーフティサポーターズ

新しい力と、次の世代へ

 協議会がこれから取り組もうとしているのが、旧三鷹消防署跡地の有効活用です。現在は公共工事用の資材置き場として暫定的に活用されていますが、協議会では、住みやすいまちづくりの一環として、子どもの居場所や防災の拠点にできればと考えています。今年6月には、新川宿町会と連名で、旧三鷹消防署跡地の利用に対する要望書を三鷹市へ提出しました。新川宿ふれあい通りの整備と同様、実現に向けて長い時間を要することが予想されますが、地域や関係者の皆さんと相談しながら、検討を進めていければと考えています。

 「みんなの笑顔が見たいから、障がいのある子もない子も一緒に遊べる遊具や、車いすで手入れできる花壇などがある公園をつくれたらいいですね。ぜひ実現させたい。私が元気なうちにね」と根岸さん。難しいからこそ、やりがいがあると話します。

 活動に参加する人が増えることも、根岸さんの願いです。7月に新川天神社で行われた盆踊り大会では、おやじの会のメンバーが、来場者の自転車整理を手伝ってくれるようになりました。実は、30年ほど前におやじの会を立ち上げたのも根岸さんです。当時は「地元の人、よその人」という意識がまだ残っていたそうです。しかし、昔から住んでいる人だけでは人手が足りません。地域に移り住んだ人にも、ここでどのような活動が行われているのかを知ってもらいたい。そんな思いから、住んでいる年月にとらわれず、学校をつながりとした新たな会をつくり、地域活動への参加につなげています。

 新川宿エリアでは新しい住宅が増え、エリアが面する東八道路周辺も整備や開発が進んでいます。まちの景観や環境が変わっていく中で、新しく地域に加わった人の力も借りながら、時代に合わせたまちづくりに一緒に取り組み、その活動を次の世代へつなぐことを目指しています。

 委員長として長年地域での活動を続けてきた根岸さんに、その原動力を伺いました。

 「何だろう? 物事をあまり深く考えないからかな(笑)。やっぱり自分がイメージしたことが実現したらうれしいし、そこで活動している人の笑顔を見ると、もっとうれしいですね。そんな姿を想像しながら『よし、やらなきゃ!』ってね」。

 

 協議会は来年、発足20年の節目を迎えます。朝市をはじめ、根岸さんが思い描いてきた笑顔は、まちの中に広がっています。

編集後記

新川宿ふれあい通りの近くに住んでいる私にとって、駅から離れたこのエリアがにぎわう朝市の日は、まちのお祭り気分でワクワクします。普段はできない食べ歩きも楽しみです。

ライター:細川優子

愛するまち三鷹に目を向け、地域資源を活かして始めた新しい事業や、同じ目的・関心から生まれた集まりなど、さまざまな形で地域の活動に取り組む人を紹介します。

ライター:細川優子