2026年度1号「地域からはじまる三鷹のまちづくり」インタビュー

公開日 2026年07月01日

三鷹まちづくり通信2026年度1号(2026年7月1日発行)

地域のつながりを育む三鷹台のまちづくり

 三鷹市の北東部に位置する三鷹台。この地域で活動する「三鷹台まちづくりの会」は、「三鷹台をもっといいまちにしたい。地域の人同士のつながりをより豊かにしていきたい」という思いのもと、地域に関わる人を増やす活動を続けています。
 こいのぼり祭りや駅前広場の活用などを通じた地域づくりについて、長年駅前で店舗を営み、まちの移り変わりを見つめてきた会長の西野和広さんにお話を伺いました。

住む人が主役のまちづくり

 三鷹市の東の玄関口として親しまれている京王 井の頭線の三鷹台駅。近年、商店が並ぶ駅前通り(三鷹市道第135号線)の拡幅や歩道の整備、バスロータリーを擁する駅前広場が完成するなど、ハード面でのまちづくりが進み、駅周辺のまちなみが大きく変わりました。整備後は、人々が集う憩いの場や、まちのにぎわいが欲しいというソフト面での地域課題が持ち上がってきました。

 こうした中、駅前の整備完成まで地域の声を集め活動していた「三鷹台まちづくり協議会」からバトンを受け、2022年に「三鷹台駅周辺のまちづくりを考える会(現:三鷹台まちづくりの会)」が発足しました。町会、商店会、住民協議会、地域住民など、さまざまな立場の人たちがつながりながら活動しています。

 この会では、住む人が中心のまちづくりを進めたいという思いで活動しています。地域に暮らす人たちが主体的に関わることが大切だと考え、誰もが気軽に活動に参加できるよう、会には会員制度を設けていません。

 西野さんは、46年前から三鷹台駅前でお茶屋を営んでいます。商店会活動を行う一方、お子さんが小学生の頃「オヤジの会」を立ち上げたり、職場体験で美味しいお茶の淹れ方などを児童に教えたりするなど、地域活動を長年されています。地域には学校や商店会、町会などさまざまなコミュニティがある一方で、コミュニティ同士の間には壁ができてしまうこともあると話します。「本当は壁なんて必要ない。同じ地域に住んでいるのだから、みんなで楽しく暮らせばいいんです」と笑顔を見せます。

 活動内容の発信にはSNSを活用しています。LINEのオープンチャット「三鷹台ファン」は地域の掲示板のような役割を果たしており、名前には支持者を意味する「fan」と、楽しさを意味する「fun」の両方の意味が込められています。三鷹台に住む人はもちろん、地域外でも三鷹台が好きな人など、現在約650人を超える人が参加しており、地域情報が活発に交換されています。

人がつながる活動の場

 会では1年を通じてさまざまな活動を行っており、「三鷹台神田川こいのぼり祭り」もその一つです。前身の協議会で2006年に始まったこの祭りを、2022年から会で引き継いで開催しており、三鷹台の風物詩となっています。今年も地域の子どもたちが中心となって描いた約700匹の色とりどりのこいのぼりが、三鷹台駅そばの神田川で春の風になびきました。

 この活動には、三鷹台駅周辺に住む人だけでなく、杏林大学のサークルや、オープンチャットを通じて活動を知った武蔵野市のボーイスカウトも参加しました。活動を通じて、新たな人のつながりが生まれています。

 また、こいのぼり祭りのような大きなイベントだけでなく、気軽につながれる場として不定期に開催しているのが「△(さんかく)会」です。名前には「参画」の意味が込められています。駅前の飲食店などを会場に、初対面同士でも食事を楽しみながら仲間づくりができる集まりです。先日は、「にほんごで飲み会」と題して、ラーメン店で多文化交流イベントを行いました。

参加者 鯉のぼり
「三鷹台神田川こいのぼり祭り」では、色々な立場の参加者が協力してこいのぼりを設営する。

イベントの先にあるもの

 「楽しいイベントを開催することが会の目的ではありません」と西野さんは言います。
行政の補助をあてにすれば、参加費無料のイベントを行え、多くの人が集まるかもしれません。しかし、補助がなくなった途端に続けられなくなるようでは、本当の意味でのまちづくりにはならないと考えています。そのため、会では、イベントごとに参加費や材料費などの形で資金を工面しながら、活動を継続できる仕組みづくりに取り組んでいます。

 例えば、こいのぼり祭りでは、以前は助成金のみを使って行っていましたが、材料費がかさみ、他の活動が積極的に行えない状況でした。そこで、メンバーが知恵を絞り、こいのぼりを販売するというアイデアが出ました。当初は「参加者からお金を集めるのは難しいのではないか」という声もあったそうです。しかし、自分で模様を描くことのできるこいのぼりを1匹500円で購入し、その場で描くイベントを開催したところ、多くの人に参加してもらうことができました。また、募金箱を設置したところ「今後もイベントを続けてほしい」「手伝えないけれど応援したい」といった声とともに、地域の方からの募金や企業からの協賛も寄せられました。また、ボランティアで参加した大学生が、「就職しても、三鷹台に居ることにしました!」と話してくれるなど、少しずつ、輪が広がっています。

 イベントを通じて、楽しいまちだと感じてもらうことは意義があります。しかし、会が目指しているのは、その先にある人と人とのつながりです。「顔見知りが増え、挨拶を交わし、困ったときには助け合える関係を地域の中に育んでいくこと。知らない人同士でも『こんにちは!』と声をかけ合えるまちが理想です」と西野さんは話します。活動の成果を振り返りながら改善を重ね、より良い形へと進化させていくために、今も試行錯誤を続けています。

やりたいことができるまちを目指して

 会の発足から4年が経過しました。しかし西野さんは、本当の意味で人と人がつながっているかという点については、まだ手応えを感じていないと言います。そこで新たに始めたのが、三鷹台駅前広場で行う「広場で何をするでもなく、居てみる実証実験」です。

 文字通り思い思いに時間を過ごしながら、駅前広場を人がつながる場所にするにはどうしたらよいのかを探っています。現在の駅前広場は単なる物理的な空間ですが、その使い方をみんなで考え、地域のつどいの場にすることを目指しています。

 5月に開催された第1回は、こいのぼり祭りの撤収の日に合わせて開催しました。いつもなら作業が終わると解散するところを、広場に集まって一緒にお茶を飲む時間を作ることで、こいのぼりを描いた親子や居合わせた人がこいのぼりの片付けを手伝ったり、杏林大学の学生が盆踊りの練習の輪に加わったりするなど、自然な交流が生まれました。

 一方で、終了後の振り返りでは課題も見えてきました。「実証実験をしています」と呼びかけるだけでは、訪れた人が何をすればよいのか分からず戸惑ってしまったのです。
 「三鷹台をやりたいことができるまちにしていきたいです。やってもらうのではなく、自分でもできるんだということを伝えたい。まちは自分たちでつくるものです。自分たちが楽しくしようとしなければ、楽しくならないんです」と西野さんは熱く語ります。この実証実験を通じて地域で何かを始めたいという気持ちを育み、まちづくりが自然に生まれる仕掛けづくりができるように、会のメンバーと次回に向けた検討を重ねています。

 地域とのつながりがなければ、まちはただ帰って寝るだけの場所になってしまいます。まちづくりとは、地域に関わる人を増やしていくこと。その思いを胸に、三鷹台まちづくりの会はこれからもそのきっかけとなる活動を続けていきます。

広場の使い方をみんなで考える「居てみる実証実験」
広場の使い方をみんなで考える「居てみる実証実験」

編集後記

 最近、「ぬい」づくりにハマっています。写真を見ながらフェルトで髪型や洋服を再現し、目や口を刺繍して、手縫いでチクチクと仕上げています。
 「何をするでもなく、居てみる実証実験」では、私ならぬいづくりをしてみたいです。あなたなら、何をしますか?

ライター:細川優子

愛するまち三鷹に目を向け、地域資源を活かして始めた新しい事業や、同じ目的・関心から生まれた集まりなど、さまざまな形で地域の活動に取り組む人を紹介します。

ライター:細川優子