公開日 2025年02月21日
三鷹まちづくり通信2024年度4号(2025年2月21日発行)
2023年10月、フレンチブルドッグ専用ライフスタイルブランド『ComeUme』がスタート。創業者のLEE YUMI(イ ユミ)さんは愛犬への想いを胸に、未経験の分野だったペット用品業界でブランドを立ち上げました。起業するまでの道のりやプロダクトに込められた工夫とこだわり、今後の展望などについて伺いました。
『ComeUme』ブランドの誕生
フレンチブルドッグ専用ライフスタイルブランドのブランド名『ComeUme』は、LEEさんの愛犬「こめ」と「うめ」の名前を組み合わせたものです。この名前には、LEEさんの「関わる全ての犬を、我が子のように愛し、我が子が使うものだからこそ、本当に良いものを丁寧に作りたい」という想いが込められています。
将来は獣医になりたいと考えるほど動物好きだったLEEさん。フレンチブルドッグの赤ちゃん「こめ」と「うめ」に出会い、家族として迎え入れました。
フレンチブルドッグは体質がデリケートで、こめは2歳頃からアレルギーや皮膚病に悩まされ、頻繁に動物病院に通うようになりました。こめがシニアになった頃、毛が薄くなって、ところどころ毛量が減っていることに気がつきました。体をやさしく包んであげられる犬用の服を探しましたが、思うようなものは無く、ならば自分でこめの肌着を作ろうと思い立ちました。そして、同じ悩みを持つ飼い主さんの役に立ちたいという気持ちから、「フレンチブルドッグ専用ライフスタイルブランド」立ち上げに向けて動きだしました。
ゼロからの挑戦
アパレルの経験もなく、ミシンさえ使ったことがない状態からのスタートでした。まずは、フレンチブルドッグの洋服を作る教室に通うことから始めました。型紙づくりの依頼や工場とのやり取りをする際、専門用語や作り方への理解が必要だと考えたからです。
その後、プロダクトを作るための工場と材料となる生地を探すことに取り組みました。その時はまだ起業前で、見込んでいる生産量が少なかったため、中々取り合ってもらえない状況が続きました。生地探しは大量のサンプルを取り寄せ、会社に出向いて生地を見せてもらうことを繰り返しましたが、LEEさんが望む品質な生地を扱う会社にはたどり着けませんでした。アパレルに携わる知人もいないため、ひとつひとつ門を叩いていくしかなかったとLEEさんは振り返ります。
そうしている間に突然の別れが訪れました。こめが急に亡くなってしまったのです。LEEさんは悲しみのあまり何も手につかなくなり、起業準備は止まってしまいました。
しかし、悲しんでばかりはいられない。「こめには間に合いませんでした。でも、体にやさしい肌着を必要とする子は他にもいる。だから、あきらめずに続けようと思いました」。LEEさんは決意を新たに、起業準備を再開することにしました。
そしてついに、LEEさんの想いに共感した、ベビー服、子供服を専門に製造する老舗の工場と契約を結ぶことができました。さらに、その工場から高品質なオーガニックコットンを使用した生地の会社も紹介してもらうことができました。「こめが一緒にいて、応援してくれている」とLEEさんは感じ取りました。
そうして2023年10月に『ComeUme』ブランドの最初のプロダクト「いつもそばにいてくれてありがとう肌着」が誕生しました。
「いつもそばにいてくれてありがとう肌着」
こだわり抜いたものづくり
『ComeUme』ブランドプロダクトのこだわりの中で特に大切にしていることが二つあります。
一つは、クオリティです。プロダクトの素材は生地を始めとして、動物、人、環境にやさしいものを優先して選んでいます。そして工場も縫製技術の高い国内の工場で製造しています。もう一つは、人目線でなくわんちゃん目線で作ることです。わんちゃんがプロダクトを噛んでも危険がなく、見た目のかわいさよりわんちゃんが使った時に心地よいものを作ることを心掛けています。例えば、可能な限りボタンを使用しないデザインにしたり、わんちゃんが肌着のタグに引っ掛かり不快な思いをしないように、素材表示を生地にプリントしたりするなどの工夫をしました。
「一生一緒にお布団セット」
三鷹から広がるフレンチブルドッグの輪
LEEさんは、緑豊かな公園など、愛犬と散歩できるスポットも多い三鷹が大好きで、三鷹で物件を探し、三鷹産業プラザ内にオフィスを構えました。
風の散歩道に面した『トリミング・ぺットホテルCORE』とは、起業前から10年以上のお付き合い。今まではこめとうめのトリミングやおやつの購入など、お客さんの立場で利用していましたが、『ComeUme』のお話をしたところ、プロダクトをお店に置いてもらえることになりました。起業して間もないため、地域の人とのつながりは始まったばかりですが、今後、広げていきたいと意欲的です。
ブランドの周知にはインスタグラムとイベント出展を活用しています。2024年の春からはペット関連の展示会やイベントに出展を始めました。直接お客様と会う機会があると、会話を通じてお客様の求めるものを理解でき、多くのわんちゃんとも触れ合えるので、今では積極的に参加しています。インスタグラムのフォロワーやイベントで新しく知り合った方など、実際にプロダクトを見るために会場に足を運んでくださるお客様が増えています。プロダクトを購入したお客様の中には「すごくかわいい」「こういうものを探していた」というコメントと共にプロダクトをSNSで投稿してくださる方や、同じような症状を持つ飼い主の方からお礼のメールが届きます。
「一度購入すると、色違いや別のデザインを揃えるリピーターになってもらえます。ブランド立ち上げに時間がかかりましたが、今では本当にやって良かったと実感しています」。
愛犬に届ける未来
今後の目標として、まず一つ目は、世界中のフレンチブルドッグにプロダクトを届けるためのグローバル展開です。昨年は台湾や中国の展示会への出展を行いました。また、現在、オンラインストアの多言語対応を進めています。準備中の今でも、SNSでプロダクトを目にした海外の方からの購入があるなど反響も上々です。二つ目は、わんちゃんの友達づくりができるコミュニティを兼ねた実店舗を持つことです。プロダクトを販売するだけでなく、店内にわんちゃんと一緒に過ごせるカフェも併設します。オープンカフェやテラス席のほかに、天候に左右されず室内でもわんちゃんが過ごせるようなお店にすることで、いつでも訪れることができる場所で、愛犬と飼い主が皆で楽しい時間を過ごせる空間を作りたいと考えています。
最後に、これから起業したい人へのアドバイスを伺うと、まだ人にアドバイスする立場ではないと前置きした上で、「本気でやりたいことがあれば、ぜひチャレンジしてほしいです。経験がなくても、本気で探せば道は必ず見つかります。これは私自身の経験から言えることです」と笑顔で答えてくれました。
ブランドのモデルは「うめ」が担当している
編集後記
『明日は一緒にどこ行く?クロップドスウェット』や『キミはボクの宝物スヌード』など温かい気持ちになるプロダクト名は「うちの子に伝えたい言葉」をインスタグラムで募集して決めているそうです。私も『キミはボクの宝物』に一票です。

愛するまち三鷹に目を向け、地域資源を活かして始めた新しい事業や、同じ目的・関心から生まれた集まりなど、さまざまな形で地域の活動に取り組む人を紹介します。
ライター:細川優子