公開日 2023年09月01日
三鷹まちづくり通信2023年度2号(2023年9月1日発行)
三鷹の起業・創業相談や創業支援メニューを活用して上連雀7丁目にオープンしたレストランJamais(ジャメ)。店名にはオーナーシェフ網干 玲佳(あぼし れいか)さんのある想いが込められています。徳島県出身の網干さんが三鷹を選んで店舗をオープンした素敵な理由や、お店を通じてはじまった地域とのつながりを伺いました。
もうひとつの故郷、三鷹
一際目立つトリコロールカラーの建物。武蔵境通りに面したその赤色に「Jamais(ジャメ)」はあります。フレンチやイタリアンを取り入れた創作料理を提供する洋食屋さんです。Jamaisはフランス語で"一度もない"という意味で、お客様に今までにない体験や食を通じた新たな出会いを提供するという想いが込められています。網干さんのご出身の四国、徳島の食材を活かした阿波尾鶏の肉料理や、すだちを使ったドリンクやデザートなども提供しています。
三鷹に店を持つことに決めた理由を伺うと「ジブリが好きで三鷹に住んでみたいとずっと思っていたんです。すごく好きで、セリフが全部言えるくらいです。旅行で何度も三鷹に来ているうちに、三鷹はとても住みやすそうなところだなと思いました。それに太宰治も好きです」と目を輝かせて話す網干さん。仕事をきっかけに上京して以来、ずっと三鷹で暮らし今年10年目になります。「三鷹は私が暮らすまち。徳島に帰省して東京へ戻る時、両親には三鷹に帰ると言っています。ああ、私にとって三鷹はもうホームなんだな。ここに骨を埋めたいという想いです。だからお店も三鷹に持ちたいと思いました」。
創業サポートを受け、夢をかたちに
2022年11月、レストランをオープン。飲食業に携わった10代の頃から、いつか自分のお店を持ちたいと思い続けていた網干さん。三鷹市内で物件を探しました。しかし、50件近い物件を見て回っても希望に合うものは見つかりませんでした。もう店を持つのは諦めようと考えていた時、今の物件に出会いました。
物件を決めた網干さんは、開店にあたり三鷹市にはどのような支援があるのかをホームページで調べ、市の「特定創業支援」を受けることにしました。「特定創業支援」とは、三鷹市、三鷹商工会、特定非営利活動法人三鷹ネットワーク大学推進機構、株式会社まちづくり三鷹が連携して実施している事業です。創業に必要な知識を習得する「みたか起業塾 特定創業セミナー」やコーディネーターによる起業・創業相談などを三鷹市在住、在勤または市内で開業予定の方に提供しており、これらを受けて、創業の知識を習得したことを三鷹市に申請すると、創業関連保証の信用保証枠の拡大や会社設立時の登録免許税の軽減措置などの特例を受けることができる制度です。
「コーディネーター相談では開店までに必要なことや、経営について相談しました。三鷹に店を持つと決めてセミナーに参加して、そこで初めて三鷹に仲間ができました。それまでは家が三鷹にあっても、当時の仕事場との往復のみで、三鷹に知り合いはいなかったんです。セミナーの同期は開業を応援してくれて、今も関係が続いています。特定創業支援を受けたことでぐっと開業が具体的になり、心強い仲間もできました」と創業時を振り返る網干さん。内装設備が無かった物件には、知り合いに頼んで床を貼って壁を作り、キッチンは2階に設置。周りの助けを借りながら、一から店を作り上げました。「本当に何もない状態から始めたんです。階段の昇り降りも結構大変です」。現在は接客から調理まで、ひとりで切り盛りしています。
開店して間もないですが、心のこもった料理とおもてなしが地域の方に愛されて、お客様のリピート率は8割近くとのこと。ランチは人気No.1の貧乏パスタや日替わりチキン、ハンバーグなど。期間限定でクレープも提供しています。ディナーはアラカルトとコースがあります。休日はランチビュッフェが人気。全て網干さんの手作りで、パンも毎朝焼いています。「夕方は帰宅前に立ち寄ってくださる会社員のご来店も多いです。お客様とお話ができると楽しいし、お店をやって良かったなと思います」と笑顔で話す網干さん。地域の方に支えられていると感じています。
働く視点で見た、まちのこと
開店前から散歩がてら店の近くを行き来していた網干さん。住む場所から働く場所にもなった三鷹の印象を伺うと「駅から離れたこの場所は、思った以上に人がいないことが分かりました。客層や人の流れはお店を始める前に調べましたが、一年を通して夏場を見ていなかった。夏は厳しいです」との答え。駐車場が1台分ということもあり、お客様のほとんどは自転車で来店される近くに住む方々です。ランチにはママ友同士のご利用が多いそうですが、都外ご出身の方は帰省するなど、夏休みはママ友の集まりも少ないようです。
ぜひ三鷹にお住まいの方に来ていただきたいとインスタグラム広告を三鷹市限定で出したこともありますが、残念ながら期待した効果は得られなかったそうです。「夏場の集客は難しいことがわかりました。今後、キッチンカーでのイベント参加を検討しています。知っていただくきっかけを増やして、つながりをひろげていきたいです」と、自分からお客様のいるところへ出かけて行くことも考え始めています。デザートも得意な網干さん。ご自身も飼っているというハムスターを形にした焼き菓子を店内で販売する他に、通信販売もしています。取材に伺った前日は50個も売れたそう。オープンしてまだ1年にも満たない今、考えられること、できることはなんでも試しています。
子どもの頃からジブリが大好きで三鷹も好きになって、念願の自分のレストランを三鷹に開いた網干さん。今日も腕を振るい、「Jamais(一度もない)」美味しい体験を用意しています。
編集後記
ランチをいただいてからの取材になりました。ビュッフェにはストロベリードレッシングがあって、日替わりパスタのマッシュルームはソースなのにきのこを丸ごと食べているような濃厚さでビックリ。まさに”Jamais(今までにない)”を味わいました。都心にお店を出しても人気店になったに違いない料理の腕前。でも三鷹が好きだからと、ここにお店を構えてくれました。毎日投稿されるインスタグラムから網干さんの熱意が伝わってきて、応援したい気持ちになります。この記事を読んでくださった方が足を運んでくれますように!(細川)
■ レストランJamais(ジャメ)
WEBサイト等:レストランJamais(ジャメ)ホームページ・Twitter・Instagram
愛するまち三鷹に目を向け、地域資源を活かして始めた新しい事業や、同じ目的・関心から生まれた集まりなど、さまざまな形で地域の活動に取り組む人を紹介します。
ライター:細川優子