公開日 2020年02月01日
三鷹まちづくり通信2019年4号(2020年2月1日発行)
三鷹には畑があり、農家があり、特産品のキウイフルーツやギンナンをはじめ、多種類のおいしい野菜や果物、植木や花が作られています。しかし三鷹市民でも知らない人は少なくありません。三鷹育ちの苔口昭一さんも、4年前まで「よく知らなかった」と言います。そんな苔口さんは今では地元の農家を応援する「まちなか農家プロジェクト」のプロジェクトリーダーです。活動を始めた経緯や、会社勤めをしながら地域活動をするコツを伺いました。
WEBサイトで農家を「見える化」
苔口さんが地元の農業に関心を寄せたのは、2016年4月、三鷹市市民協働センターで開かれた「市民×IT」というイベントに、運営の1人として関わったときでした。地域の課題を、ITを使って解決するという主旨で、子育て、防災などと並んで、課題に挙がったのが農業でした。分科会でさらに農業について考えを深めていき、農業者と意見交換をするなかで、「農家さんがやっていることを住民が知らない、畑や農業があることすら知られていない。それならWEBサイトで彼らを『見える化』するのが大事だと気づきました」と苔口さんは振り返ります。
苔口さんも含め、10人ほどの仲間は30~40代が多数。仕事のかたわら毎日のようにネット上で議論を重ね、その年の秋にはWEBサイトがスタートしました。「ロゴを作る人、チラシを作る人、サイトを作る人など、それぞれが持っているスキルを持ち寄って、スピードを持って立ち上げにこぎつけました」。
活動は、知らせる・交流する・食べる
活動には3つの柱があります。1つはWEBサイトから情報を発信して「知らせること」。「三鷹の農家さんは地産地消の農作物を作っているだけでなく、小学校全校で食育のゲストティーチャーをし、学校給食に野菜を提供し、さらに消防団員として地域の安全を、お祭りの担い手として地域文化を守っている。そうしたことは、新聞では紹介されていましたがなかなか知るすべがありませんでした。農家さんは子どもたちには有名で、ヒーローなんですよ」と苔口さん。「農家さんをネット上でもヒーローする」のが狙いです。「三鷹に畑を残そうという声を広げて、農家を応援していきたい」と考えています。
活動の2つめは、まちなか農家さんを知った人の「交流の場」である、オンラインコミュニティの運営。3つめは実際に「買える、食べられる機会の創出」です。三鷹駅周辺で毎月、農作物の受け渡しを行っています。
地域活動は無理なく、が鉄則
発足から4年が経ち、活動の効果はさまざまな形で現れています。WEBサイトには注文や問い合わせ、取材の依頼が増えています。プロジェクトを手伝いたいという志願者も名乗り出ています。他団体と共催して、都市農業と防災を考えるイベントも開催しています。1月には農家さんをゲストに迎えて、「まちなか農家ラジオ」の公開収録を行いました。ラジオは新たな交流の場となる計画です。
活動の幅が広がり、都心の会社に勤める苔口さんには、負担が大きくはないのでしょうか。疑問を投げかけたところ、「平日は18時まで働き、夜は農家さんやメンバーと打ち合わせ。土日のどちらかは農家に行ったりイベントをしたり。でも残りの1日は必ず休みます。無理はしません」とのこと。
都心に通勤しながら地域活動を始めるのに、ハードルを感じる人もいるのではないでしょうか。「気になるイベントや活動があったら、まず行ってみるのが第一歩。どの活動でも門前払いということはないですよ(笑)」。苔口さんは30歳を目前にした頃、自分にも地域でできることがあるのではと自分より40歳も歳上の人に連絡を取ったことがきっかけで、みるみる活動が広がっていったと言います。「三鷹では歳が離れている人とでもギャップが少なくて、意見を言いやすい。活動しやすいまちだと思います」と同世代にエールを送ります。
- まちなか農家ラジオ第1回公開収録の様子
- 三鷹特産キウイフルーツの収穫作業を学ぶ会の様子
■ まちなか農家プロジェクト
WEBサイト等:https://machino.tokyo/・Twitter・Instagram
まちなか農家ラジオ:https://anchor.fm/machino
三鷹在住のライター 小田原 澪が、三鷹でまちづくりの一翼を担う人にスポットを当て、事業活動を通して紹介します。
ライター:小田原 澪